第5話 【やり直しのヴァンパイア】(不良・手直しのムダ)
― 若手社員 佐藤が挑んだ、見えない敵(ムダ)との戦い ― その⑤
「嘘だろ……。これ、全部やり直しか?」
金曜日の午後。 正常に流れてくるはずだった完成品が、
【暴食のスライム(第4話)】を消し去り、すべてが順調だと信じていた。
工場の隅、光の届かない場所から、
【やり直しのヴァンパイア】(不良・手直しのムダ)
属性: 吸血、寄生、虚無
正体: 「後で直せばいい」という油断と、「未熟な作業標準」 が生み出した呪い。
能力: 二重の労働(作る時間+直す時間)を強いることで、会社の利益( 血)を吸い尽くし、社員の情熱を枯れさせる。 その呪いは後工程へ行くほど深刻化し、組織に致命傷を与える。
「佐藤、これじゃ出荷に間に合わん! 全員残業だ! 今すぐ全員で手直しにかかれ!」 課長の怒声が響く。
だが、俺は石のように動けなかった。
それは、現場が流した汗のすべてが「
ヴァンパイアが、俺たちの背後で嘲笑っている。
「
「……待ってください。手直しや検査を増やしても、
「何を言ってる! 検査しなきゃ不良品が客先に行くだろうが!」
「検査は『価値』を生まない! ただの敗北処理です!」
俺の声が、工場に突き刺さる。
「傷口に包帯を巻く人間を増やす前に、なぜナイフが刺さるのか! そのナイフを叩き折らなきゃダメなんです!」
俺は「思考の聖剣」を構えた。今度の剣は、
思考の聖剣:第5式【源流封鎖(ポカヨケ・自働化)】
俺は不良が生まれる「源流」へと遡った。そこには、
1. 「なぜ」の連鎖(真因の特定)
なぜ寸法が狂う?…治具の固定が甘いから。なぜ甘くなる?…
なぜ緩む?…機械の振動のせいだ。
なぜ対策しない?… 「
作業者が気をつければ大丈夫」という、
2. 知恵の物理化(ポカヨケ)
「人の注意」という最も不確かなものに頼るのをやめた。
部品を置くトレイに、正しい向きでしか収まらないよう、
これで、そもそも間違った向きでは部品を置けない。
さらに、ボルトを締めるレンチにはマーキングを施し、
ヴァンパイアが牙を立てる「うっかり」や「バラつき」
3. 機械への〝しつけ〟(自働化)
機械に高度な知能はいらない。
ただ、異常を知らせる「声」
治具がわずかでもズレた状態でセットされると、
さらに、異常な振動を検知すると、機械が自ら停止し、
機械が「私は今、毒を産んでいる!」と判断するんじゃない。
「いいですか! 不良を『見つける』のは敗北です!
不良を『作れない』仕組みにすることだけが、
俺が最後のリミットスイッチの配線を繋ぎ直した瞬間、
ヴァンパイアが、その存在基盤を失い、悲鳴もなく霧散したのだ。
カチッ、という小気味よい音。
治具が完璧に噛み合い、
「……不良が、止まった」 検査員が、空になった赤いカゴを見て呆然と呟く。
地獄のような残業が消え、現場に安堵の空気が広がる。
「佐藤……」 課長が、手直しのために慌てて装着した軍手をそっと外し、
「ふう……」 俺は大きく息を吐き、自分の手を見た。
ヴァンパイアは倒した。
だが、その時。
遠くの工程で、作業者が一人、
その足取りは重く、生気がない。 まるで、
【彷徨えるゾンビ】(運搬のムダ)
「……せっかく最高の部品を作っても、
第5話 完
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